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桜井カンパニーは、人型ロボットの製造とレンタルをする会社だ。
社員数は、創業者である桜井と数人の部下しかいない。
そのうえ誰一人、コンピューターや機械に詳しい者はいない。
むしろ、アナログな人間の集まりだ。
それでも昨今、需要を拡大し続けているのには理由がある。
まず、桜井カンパニーのロボットは、見た目の質が圧倒的に高い。
肌の艶、眼の色、髪の毛一本に至るまで、実に精巧な作りは、業界トップクラスと称される。
また、それは中身においても同様だ。
体温は、人体のそれと変わらないうえに、人間の体のように様々な要因で変化する。
そして、まるで生きているように心臓が鼓動し、脈を打つ。
さらに驚いたことに、あくびやクシャミをし、時にはオナラだってしてしまうことがある。
完全に、人間の生命活動を再現している。
そしてなによりも評価が高いのは、その頭脳、AIだ。
多くの学者がAIに対し日夜、研究と開発を繰り返すのを嘲笑うように、完璧な人の思考回路、さらには感情さえも持っている。
「それだけの性能を持ち合わせながら、メンテナンスフリーなんですよ」
「ほう……」
商談室のソファーに深く腰を掛けた男は、桜井の説明に、興味深そうに顎をさすった。
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