桜井カンパニーの秘密

2/14
前へ
/14ページ
次へ
 桜井カンパニーは、人型ロボットの製造とレンタルをする会社だ。  社員数は、創業者である桜井と数人の部下しかいない。  そのうえ誰一人、コンピューターや機械に詳しい者はいない。  むしろ、アナログな人間の集まりだ。  それでも昨今、需要を拡大し続けているのには理由がある。  まず、桜井カンパニーのロボットは、見た目の質が圧倒的に高い。  肌の艶、眼の色、髪の毛一本に至るまで、実に精巧な作りは、業界トップクラスと称される。  また、それは中身においても同様だ。  体温は、人体のそれと変わらないうえに、人間の体のように様々な要因で変化する。  そして、まるで生きているように心臓が鼓動し、脈を打つ。  さらに驚いたことに、あくびやクシャミをし、時にはオナラだってしてしまうことがある。  完全に、人間の生命活動を再現している。  そしてなによりも評価が高いのは、その頭脳、AIだ。  多くの学者がAIに対し日夜、研究と開発を繰り返すのを嘲笑うように、完璧な人の思考回路、さらには感情さえも持っている。 「それだけの性能を持ち合わせながら、メンテナンスフリーなんですよ」 「ほう……」  商談室のソファーに深く腰を掛けた男は、桜井の説明に、興味深そうに顎をさすった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加