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「気になる充電も不要です」
「ん? どうやって、維持をすると?」
「お客様、それが、なんとですねぇ」
桜井はタブレット端末を取り出し、得意げに画面を見せた。
「これは?」
「体内の、構造です」
「なるほど……」
胃袋のようなデッサンを、見たことのない記号や解読不能な英数字が取り囲んでいる。
近未来やテクノロジーといった、未知の世界を連想させるような画面を、客は時折り納得したようにうなずきながら眺めていた。
今回の商談相手は、こういうのに目がないことを、桜井はよく知っている。
話し方や態度から察するに、興味本位でロボットをレンタルしようと思っていそうだからだ。
しばらくすると客は腕組みをして天井を眺め、なにかを考えるような素振りをしはじめた。
しかしやがて、お手上げといったような顔で、ニコッと微笑んだ。
「桜井さん、つまり、これでどうやってエネルギーを維持すると?」
「普通に、ご飯を食べさせてやってください」
「……え?」
言葉を失った客に、桜井は「内緒ですよ」と言って、ゆっくりと耳元で囁いた。
「カロリーを、エネルギーに、変換する機械が内蔵されています」
「そんなまるで、人間みたいなことを……?」
桜井はその言葉を待っていたかのように、ゆっくりと大きくうなずいた。
「この先、本当の意味で人類はロボットと共存していくのです。寝食を共にし、生きていくのです。ですから……」
「ですから、なんですか、桜井さん」
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