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「社長、準備できましたぁ」
リカは袖を捲り、二の腕のバーコードを見せた。
バーコードは、専用液のみで落とせるシールだ。
他にも関節など、注意深く見ればわかる位置に、桜井が考えた謎の記号や、適当な英数字が薄らと見える。
タブレットの画面と同じ手法だ。
いかにもありそうな、ロボットであることのアピールだ。
それは、より人に近い造形を求め続ける時代だからこそ、大きな効果をもたらしていた。
「お、リカちゃん、頼んだよ」
「はーい、がんばりますぅ」
「じゃあ行こっか」
桜井は行き先を確認すると、隣にリカを乗せ、車を走らせた。
「リカちゃん、今回は男の注文だね」
「そうですねー」
「あまり変な気を起こさせないでね? 面倒なことにならないように」
「わかってますよぉ。でも、イケメンだったらいいなぁ」
「イケメンは頼まないよ、きっと」
「えー、社長のいじわるぅ」
客の目的は、女性との生活を経験してみたいというものだった。
あまりにもありがちな内容だが、桜井は真剣にプランを考えていた。
詐欺師の基本は、まず人に夢を抱かせることだ。
「明るい未来を見せることが、大事だからね」
「わかってますよぉ、社長」
そして詐欺師の心得は、常に目的を忘れないことだ。
「しっかり搾り取ってきてね」
「もちろんですぅ」
桜井はククク、と笑った。
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