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レンタル期間は終了し、桜井はリカを迎えに行った。
リカの報告によれば、すべては順調に終わったとのことだった。
笑いがこみ上げてくる。
一体、どれだけ絞ってやったのか──。
桜井は嬉々として送迎車のハンドルを握った。
リカは容赦がない。
ああ見えて、何ごとにもストイックな女性だ。
「素晴らしい!」
リカの迎えに行った桜井は、思わず拍手をした。
「ね、社長。すごいでしょー?」
「あぁ、最高だ。よくぞこんなにも搾り取ってくれた!」
おっと、と桜井は口を手で押さえたが、その様子に客の男は照れくさそうに笑った。
「へへ、ありがとうございます」
「お客様、素敵な未来への一歩が踏み出せましたね」
「ええ、これも桜井カンパニーさんのおかげです」
「いえいえ、我々はお手伝いをしただけです。弊社のAIはいかに進化しようとも、お客様のように強い意志を持てませんし、努力もできません。御自身を誇りに思ってください」
帰りの車内で、少し残念そうな顔をして窓の外を見つめるリカに、桜井は声をかけた。
「やっぱり別れは寂しいね。ロボットじゃないからね」
「もう、残念過ぎですよぉ」
リカは頬を膨らませた。
その理由は聞くまでもなかった。
「たくさん搾り取ったね」
「ええ、あんな風になるなんて、本当に残念ですぅ」
「どんな魔法を使ったの?」
「明るい未来の話をしただけですよぉ」
「さすが! 素晴らしい!」
桜井カンパニーが急成長を続けているのには、もう一つ秘密がある。
それは顧客満足度の高さだ。
この詐欺がバレない最大の理由も、そこにある。
「お客さん、近い未来に本当の女性と生活できそうだね」
「私だって本当の女性ですよぉ、社長」
「あー、ごめんごめん」
リカに無駄な贅肉を搾り取られた客は、驚くほどのイケメンになっていた。
それを思い返した桜井は、腹の底から込み上げてくる笑いを堪えきれず、クククと笑った。
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