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「社長、準備完了っす。いつでもいけるっすよ、俺」
ジンは袖をまくり、バーコードを見せた。
褐色の肌と盛り上がった筋肉により、それはバーコードというよりは、違うなにかに見える。
それを見た桜井は少し考えると、ジンを呼び寄せた。
「ジン、どうせやるなら、これくらいいこうか」
ギラッと光る右目の下に、謎の記号のシールを三点、指の関節や首にも、数点の英数字を貼っていく。
「ジン、かっこいいぞ」
「あざっす」
金髪にアクセサリーを身に付けた、ただでさえ迫力のあるジンの風貌が、より強調された。
「さぁ、行こうか」
桜井は車に乗り込み目的地へと向かった。
「ジン、今回の客はわかってると思うけど、繊細だ」
「そうっすね」
「くれぐれも、ボロが出ないように頼むよ」
「わかってるっす。俺、そういうの慣れてますから」
グッと拳を握り、白い歯を見せたジンに、今回のプランを考えた桜井の胸は傷んだ。
「……すまないね」
「平気っす。明るい未来のためっすから」
車を降り、インターホンを押すと、ドアがわずかに開かれた。
「桜井カンパニーです。この度は」
ドアの隙間から顔を出した男は、ビクッと体を震わせた。
「あの、こ、こちらの方が……?」
「ええ、弊社の人型ロボット、ジンです」
桜井が身を引き、ジンが一歩前に踏み出すと、男はさらに委縮した。
男のレンタルの目的は、見返してやりたい、だった。
細かな事情は知らないが、要するに強面な男を連れて誰かを威嚇したい。
そんなところだ。
「お客様、安心してください。弊社のAIに危険行為を及ぼすプログラムはありません」
桜井がそう言い、ジンが白い歯を見せると、男は気まずそうに会釈をした。
「よろしくな!」
差し出された褐色のゴツい手を、震える手で握り返す。
ジンはそのまま半ば強引に玄関を抜け、部屋へと入った行った。
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