1人が本棚に入れています
本棚に追加
原作にはないイベントが起こった。
原作通りの人数の仲間、倒したモンスターの数、回収したイベントの数々、これまでは順調だった。森を抜け次の村を目指している途中から、奇妙な噂を耳にした。
「人に化けるのが得意な魔王軍が、裏切り者として紛れているらしい、そいつは勇者一行を撹乱して悪い方へ導こうとしている」
それを聞いた時はギョッとした。そんなこと今まで一度も書かれていなかったのに。俺は思考を巡らせた。そして思い返してみて、1つの可能性が出てきた。タマキタは、今、俺が未読の3巻の世界に入ろうとしているのだ。
半年と1ヶ月前の記憶を遡る。たしかに、2巻は魅惑の森で湖に棲む精霊に誘惑されそうになる、勇者を仲間が助け出した所で終わっていた..気がする。森を抜けた先にある、目的地の村については書かれていなかった。森の中に伏線でもあったのか?いきなり出てこなかったやつが裏切り者なんてのはないだろうから、やはりこの中の誰かなのか?そんな疑惑が俺の頭から離れなくなっていた。
そんなことがあって、森を抜けてからめっきり先読みの能力が使えなくなり、その理由を尋ねても濁す俺に、みんなが疑惑を募らせるのは当然だった。村について、気さくな宿屋の主人と魔法使いが作ってくれた飯を囲み、今日もなんとか凌げたかと思っていたのに、とうとうパーティーから追放されることになってしまった。でも、俺は魔王軍の手先なんかじゃない!俺自身がそれは1番わかってる!というか、こんな群馬みたいな村で見捨てられたら元帰宅部高校生の俺死んじゃう!
やり直しのきかない転生系主人公の俺は一か八か全てを打ち明けることにした。
最初のコメントを投稿しよう!