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転生して、程なくして気づいた。ここは、タマキタの世界だと。出てくる街の名前、王様の名前、俺に与えられた役割、チート能力ありの「勇者」。全てがタマキタそのものだった。だから、履修済みの俺は思ったよりパニックにはならない、そう思っていたのに、読むのとやるのとでは全く違った。タマキタの世界では名前のあるキャラ以外にも、俺がいた世界と同じようにみんな感情があって名前なんて知らないだけでみんな当たり前のように暮らしている。社会がある。
日本という、高校生が生きる分には比較的、何不自由ない安全な暮らしに浸ってきた俺にとって、魔物蔓延るタマキタの世界はゴキブリ1匹にも必殺技を使ってしまう俺には、ストレスで胃に穴が開きそうなくらい大変な場所だった。そんな時に出会ったのが、盗賊だ。タマキタで描かれている出会い方とは少し違ったものの、手首から出血していた彼を介抱し、原作通り、悪い親玉に従っていたことがわかったのでそれも解放したことから俺たちの友情は始まった。
盗賊は性格に波こそあれ、この世界の住人の中でもかなり会話がしやすかった。そんな彼と接しているうちに、俺も気を取り直し、原作さながら、預言者のように次に起こる出来事を言い当て、迎え撃っていたのだ。
それが、まさか仇となるとは、思いもせずに。
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