プロローグ

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プロローグ

 その日におきた惨劇(さんげき)を、俺は途中までしか覚えていない。  思い出せるのは、夜中に眠れなくて、なにか本でも読もうと両親の寝室に降りていったこと。  父親は小難しい本をいっぱい持っていたから、眠れないときはいつも本棚から本を借りていた。  ノックすると、きちんと閉まっていなかったのか、はずみでドアがぎぃと開く。 「おとうさん?はいっていい?」  返事がない。ドアのすき間からはテレビの音がもれていた。 「おとうさん?おかあさん?」  テレビに負けないようにと声を強めてみたけれど、それでも両親の声は聞こえなかった。 (テレビ、つけっぱなしで寝ているのかな)  いつも俺には電源をつけたら消せと口うるさく言うくせに、と怒りを感じる。 「はいるよ」  不機嫌な声でそういうと、室内からゴトンと何かが落ちる音がした。とくに気にとめずにドアを開ける。  室内を見わたすと、電気の消えた部屋でテレビの画面がまぶしかった。  女性の吐息らしい音が聞こえてぎょっとする。画面に映っているドラマは海外の恋愛ドラマのようで、とても過激なセックスシーンが流れていた。  一気に心臓が鼓動をはやめる。 (おとうさんたち、こんなもの見てたの……?!)  体が熱くて、お腹の下あたりがむずむずしてくる。思わず股間をおさえるとそこは硬くなっていて焦った。  同じクラスにやたらと知識が豊富な友だちがいて、前に教えてもらったことがある。 (これって、そういうこと?)  ドラマの中の男女はもつれあい、汗にまみれながらしきりに腰を振っている。女性は胸をはげしく揉まれながら苦しげにあえいでいた。  もどかしくて、ズボンを下にずらす。けれど、どうすればこのむずがゆさを消せるのかわからなかった。  画面の中の女性は両ひざを男性にかつがれ、ほとんど無抵抗の状態で男性に腰をぶつけられていた。  俺は息が上がり、下半身に集まる熱をなんとかしたくて苦しかった。股間を力いっぱい握ると、痛みの中に、心地よい刺激を感じた。 (気持ちいい……)  何度も何度も股間を握ると刺激は少しずつ快楽に変わり俺は夢中になった。けれど、どれだけそうしていてもむずがゆさは無くなってはくれなかった。  俺は苦しくて泣きながらずっと股間を握り続ける。  すると。 「ふふっ……そうじゃないよ」 「?!」  背後からから男の声がした。振り向こうとするのを制止するかのように後ろから力強く抱きしめられる。 「だれっ?!」 「しーっ、静かに」  手で口をおおわれ、俺は息苦しさでうめいた。男はもう片方の手で俺の股間に手をのばす。 「?!何するのっやめ」 「かわいいね、君。ほら、こうするんだよ」
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