何でクローズの僕が会社公認の恋人なんですか

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「…何ですか、それ」  最初に口を開いたのは石田さんだった。 「何って酷いな。付き合ってるんだよ、俺ら」 「冗談はやめてください。お、男の人なのに」 「まあ、だから秘密にしてたんだけどね。でも、好きになったら、そんなもん関係ないだろ」 「そんな…」 「とにかく、忍くんだけは譲れない。ごめんね」  佐倉さんは顔の前で片手を拝むように立てると、一言も口を挟めない僕の腕を引いて公園を後にした。 石田さんは呆然として僕たちを見送っていた。 何か言ってあげたかったけど、本当のことを言うと彼女に止められる方がまだよかった気もするけど、どんどん歩いていく佐倉さんに僕は引きずられていった。 人通りが多くなると、佐倉さんは僕の腕を離した。 「悪い。突然」 「いえ。…ありがとうございました」 助けてくれたことにはなるんだろう。 「幸ちゃんにはかわいそうだったけど、俺もちょっと焦ってたから」  佐倉さんが苦笑いの顔になった。 「何で、あんな嘘…」 「俺は本気だよ。何なら、今からでも付き合って欲しいと思ってる」  こんな台詞(せりふ)がすらすら出てくるなんて、きっと誰にでも言えるんだろうな。僕は少し冷めた気分で考えをめぐらせた。 それにしても、この人…。 「…佐倉さんって、ゲイなんですか」 「いや。どっちもいけるというか」 「は?」 「好きになったコがタイプってことかな」 「…それ、本気で言ってます? チャラ過ぎですよ」 「(れっき)としたパンセクシャルだろ。そういう君はどうなんだ?」  矛先が僕に向いて、ぎくっとする。 「何で言わなきゃいけないんですか」 「無理にとは言わないけど、何だかいつも悩んでるみたいだったからさ。力になりたいなって思ってたんだ」 「…余計なお世話です」 「ほら、僕も男性を好きになるってわかったんだし、君が誰を好きでももう驚かないよ。少しは気が楽になったでしょ」  思いがけない言葉に彼の顔を覗くと、優しそうな瞳と視線がぶつかった。僕は何て答えていいかわからなくなり、彼からすっと目を逸らした。 「…誰でもいいって言ってるように聞こえますけどね」 「酷いなー。マイノリティ同士仲良くしようぜ」  そう言われると、僕もそれ以上返す言葉がない。 自分のことは認めて欲しいのだから、他人のこともとやかく言えなかった。 でもさ この人の場合 どこまで本気なのかってことだよね それに、僕の理想のタイプと違うんだよなあ…
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