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やりたくもない賭博にタバコや酒。なんなら家具や家電に当たり散らして情緒不安定なサイコ野郎を演じ切った。
妻はまんまと騙されてくれた。離婚ってやつだ。
この時の涙は墓場まで持ち帰るから許してほしい。せめてガン保険さえ入っていれば全て丸く収まったかもしれない。
世の中は金。これだから保険は大切だよな。
そんなことは置いといて、俺には死ぬ前に必ず成し遂げればならない仕事が出来てしまった。
「どうやって自殺するかねぇ……」
「やめろよ、まじで。目頭が熱くなる」
目の前にいるぽっちゃりは親友のひろゆきだ。女には好かれないがこれほど信用出来る人間はこの世にいない。まあ、腐れ縁ってやつなんだろう。この男と一緒にいるとついつい口が軽くなっちまう。だからこそ余命のこともペラペラと喋っちまった。
「それで静香さんと雫ちゃんは今どこに?」
「多分、実家に戻ってるんじゃないかな……今頃雫が歯を磨いて寝る時間だな……」
「やめてくれよ。もう口を閉じてくれ。泣いちまう」
「悪いかよ。好きすぎてたまらんのだよ」
「いや、マジで。らしくないぞ!! 調子が狂う。突然人の家に押しかけて来たからに、勘弁してくれ」
ひろゆき曰く、こんなに素直だと気持ち悪いとの事だった。
確かに年中無休で上司の悪口を言う、そんな人間だった。でもそれはこの後に及んでくだらないと思っちまう自分がいる。
ひろゆきは立ち上がり、台所にある冷蔵庫からいつもの発泡酒を取り出した。
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