3人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえず、一杯飲んで落ち着きな」
「いいのか?明日は仕事が早いだろ?」
「なに、親友が困ってるんだ。こんな時に横にいてやれなくて、なにが親友さ」
「ひろゆき……おまえ……ほんとにいいやつだな……」
「やめてくれ、そっちだけは断固お断りだぞ」
幸せな人生に恵まれた。改めて強く噛み締める。
なんなら女と縁がないひろゆきを抱いてやろうとさえ思った。
発泡酒を受け取って栓を開ける。
プシュっと空気が抜けた音が、小さな四畳半の部屋に鳴った。
缶に口をつけてトボトボと喉の奥に流し込む。
「ぷはっ!たまんねぇ!!やっぱこれだよな、一番安い発泡酒!」
ひろゆきはそれを眺めて微笑んでいる。
「馬鹿野郎!値段は旨さに比例しない。安いから買ってるんじゃない、美味いから買ってるんだ」
今となっちゃ、この聴き慣れたフレーズが心に染みる。
これを聞くとネタに聞こえるかもしれないが、この男は冗談を言えない。ほんとに不器用なやつだ。笑えない。
俺は胸が熱くなって気がつけば口ずさんでいた。
「ありがと」
ひろゆきは目を丸くして、やり場のない表情する。そして思い出したかのように上手く話をすり替えた。
最初のコメントを投稿しよう!