始まり

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「とりあえず、一杯飲んで落ち着きな」 「いいのか?明日は仕事が早いだろ?」 「なに、親友が困ってるんだ。こんな時に横にいてやれなくて、なにが親友さ」 「ひろゆき……おまえ……ほんとにいいやつだな……」 「やめてくれ、そっちだけは断固お断りだぞ」  幸せな人生に恵まれた。改めて強く噛み締める。  なんなら女と縁がないひろゆきを抱いてやろうとさえ思った。  発泡酒を受け取って栓を開ける。  プシュっと空気が抜けた音が、小さな四畳半の部屋に鳴った。  缶に口をつけてトボトボと喉の奥に流し込む。 「ぷはっ!たまんねぇ!!やっぱこれだよな、一番安い発泡酒!」  ひろゆきはそれを眺めて微笑んでいる。 「馬鹿野郎!値段は旨さに比例しない。安いから買ってるんじゃない、美味いから買ってるんだ」  今となっちゃ、この聴き慣れたフレーズが心に染みる。  これを聞くとネタに聞こえるかもしれないが、この男は冗談を言えない。ほんとに不器用なやつだ。笑えない。  俺は胸が熱くなって気がつけば口ずさんでいた。 「ありがと」  ひろゆきは目を丸くして、やり場のない表情する。そして思い出したかのように上手く話をすり替えた。
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