教育実習で来た先生が、俺の初恋の男性でした

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 みなさんこんにちは。ななはらこずえ、しょうがっこういちねんせいです…。  ってな感じで、当初は書き進めようかとも思ってたんですよ。「過去」の体験を語る時。だけど、やっぱやめときます。平仮名ばっかで、みなさん読みにくいだろうから。それに子供目線だと、色々と言葉に出来ない感情もあるだろうしね。だからあくまで17歳になった「大人」視点で、あの頃の出来事を語ります。要はしばらくの間、「現在」と「過去」を行ったり来たりするんでよろしく。そう言う形式の、小説です。  改めまして、みなさんこんにちは。七原梢7歳です。この春から、晴れて小学生になりました。彼…「雪兎お兄ちゃん」と初めて会ったエピソードなのかって?お察しの通りです。だけど最初のやり取りは、手紙だったんですよ。小学校で、上級生と下級生の交流みたいのがあったんですね。  六年生は、一年生の子と。五年生は、二年生と。どこの学校にも、こう言う交流の機会ってありそう。名前は何て言ったか、まんま「ペア制度」とかだったかな?もうちょい、低学年にも分かりやすい名前だったような気もする。  要は、当時六年生だった雪兎くんと俺がペアになったんですね。両親は、小声で「当たりだな」って言ってました。伊勢嶋家と言えば、ここいらで知らない住民はいませんから。市内でも大きめの個人病院経営してて、俺も風邪引いた時とか何度かお世話になってました。実家が、これまた洋画に出てくるみたいな大邸宅なんだとか。  男ばっかりの四兄弟で、雪兎くんはその末っ子。兄たちは、いずれも医者を目指して超名門校に通っているらしい。上の二人が、すでにどっかの医大に通ってるとかだったかな?ただ雪兎くんだけは、「医者にはならない」と公言しているみたい。その真意こそ、定かではないけど…。優秀さは、兄たちにも決して引けを取らず。大した勉強もしてないのに、学力テストとかでかなりの成績を収めているらしいよ。幼い俺にも、何だかその凄さは理解出来た。「当たり」どころか、SSRの類だったんじゃないかな。  反面、身体能力はあまり優秀とも言えなかったようで…。まぁでも、いいんじゃないかな。誰にだって、向き不向きってもんがあるんだし。六年生になって跳び箱の四段も覚束ないくらい、大した欠点じゃないと思うんだ。あ、あと走るのもクッソ遅くて…。いや、この辺りにしとこうか。別に、雪兎くんをディスるのが目的じゃないから。  だいぶ、話が逸れた。とにかく、手紙だったよね。小学校の入学初日に、担任の先生から渡されたんだ。一年生でも読みやすいように平仮名ばかり使って、丁寧な字で書かれていた。  『ななはら こずえくん  はじめまして。おにいさんは、いせじまゆきとっていいます。こずえくんのいえから、わりとちかくにすんでいるよ。  だから、こずえくんのことはなんどかみたことがあります。みちを、あるいているときとか。こうえんで、あそんでいるときだったり。とってもげんきそうで、いいこだなとおもっていました。だから、あえるひをたのしみにして…』  だいたい、そんな内容だった。俺は、これを書いた人物はどんな素敵なお兄さんなんだろうと胸をときめかせた。俺も、「あえるひを」楽しみに待ちわびるようになった。そして、その機会は案外早く訪れた。学校の行事で、市内の公園の花見に行ったんだよ。そこで、ペアになった生徒と顔合わせをする機会があった。桜の花びらの舞い散る中、本当の意味で初対面を果たした訳だ。    b848c5e2-fe81-4bd4-ba06-ff22b1518cfa  「梢くんだね?初めまして!君とペアになった、伊勢嶋雪兎です。これから一年間、どうぞよろしくね!」  まだ声変わりもしていない、優しそうな声で話しかけられた。その名前通りの、雪みたいに白い肌。対照的に、「天使の環」が浮かび上がるくらき真っ黒な髪の毛。風が吹いたらそのまま飛びそうな、華奢で細い身体。光り輝く八重歯と…ついでに、エロぼくろ。今まで見てきたどの女の子よりも、可愛くて魅力的だと思った。要は俺は、初対面のお兄さんにすっかり心を射抜かれてしまったんだ。  それから、何かの行事の際にはずっと一緒に行動した。また、家が近かったため毎日一緒に登校していた。雪兎くんが卒業するまでの、一年だけだったのは残念だけど…。彼との交流は、卒業後もそのまま続いたよ。あーっと、それよりも前に…。  まずは、この日の花見がとっても楽しいものだった。その後ペアの上級生に手紙を書く機会があったので、彼に対する感謝の言葉を拙い文章で書き綴ったさ。あれが、人生で初めてのラブレターと言えるのかねぇ。  『いせじま ゆきとおにいちゃんへ  おてがみ、ありがとうございます。どんなひとだろうときになっていたので、きょうあえてとてもうれしかったです。おはなみでも、いろいろやさしくしてくれてありがとうございます。とっても、たのしかったです。がっこういがいでも、おにいちゃんといっぱいあいたいとおもった。  ぼくは、ゆきとおにいちゃんがだいすきです』
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