教育実習で来た先生が、俺の初恋の男性でした

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 ぼくは、ゆきとおにいちゃんがだいすきです…。  みなさん、こんにちは。七原梢17歳です。宣言どおり、「現在」に戻って参りましたよ。しばらくは、こうやって過去と現在を行き来しますのでよろしく。  早速ですが、今ちょっと忙しいんですよ。何をするのに、忙しいかって?そんなの、決まってるじゃないですか。  教育実習生として再会した「雪兎お兄ちゃん」の唇を奪って、なおかつ舌まで突っ込んでそのままゆっくりと弄ぶのにです…。  え?再会した初日で、急展開すぎやしないかって?これくらい、普通じゃないですか?こちとら、10年越しで想いをこじらせてますから。それに、構想段階では初日にラブホで「ご休憩」する案もあったんですよ。それに比べたら、むしろ慎重すぎるとすら言えるでしょう。  一体全体、どう言う流れでこうなったか?そもそも、今はいつで場所はどこなのか?順番に、お答えします。  まず、時間としては初日の放課後です。「伊勢嶋先生」に、ちょっと話があるって事で持ちかけたんですよ。ただ彼も教育実習生である立場上、特定の生徒とあまり親密にする訳にもいかない。だから、放課後まで待って学校の駐輪場で待ち合わせたんです。  俺はいま埼玉県民なので電車通学ですけど、雪兎くんは高校時代と同じくチャリで通ってますから。本来は都内のマンションに下宿しているけど、さすがに群馬の高校まで毎日通えない。だから教育実習の期間だけ、高崎市の実家に戻っている訳ですね。どうでもいいけど雪兎くんの自転車、中学生から乗ってるようなボロいママチャリだぁ…。金持ちのくせに、物持ちいいにも程があるっての。  ともかく、何やかやと理由をつけて駐輪場まで付いて行きました。もともと人気の少ない所ですが、さらに人目のつかない校舎裏へと連れ込みました。そこで腕力に物を言わせ、無理やり壁に押し付けました。さらに無理やり唇を奪って、今に至る次第です。ここまでは拍子抜けがするほど、あっけない作業でした。昔から、夏場のそうめんくらい状況に流されやすいんですよね彼…。  差し当たって今は、唇の柔らかさを堪能するのに忙しいです。流石にファーストキスではないけど、気持ちいいとか気持ち良くないとかってレベルじゃないぞこれ。脳天を、電流が突き抜けてるみたいだ。雪兎くんもトロ顔になって、快感に身を委ねている…。  かと思いきや、突然両の手で身体を突き放された。ヒョロい身体つきで筋力もないと思いきや、意外と凄い力だった。まぁこんな見た目でも、一人の成人男性ではあるしね。次回から、もっと容赦なく抑えつける事にしよう。  「梢くん、突然何するの…?こう言うのはね、本当に好きな者同士でやるものだよ」  何を言うかと思いきや、先生みたいな堅苦しい事を言いだした。いやまぁ、先生ではあるんですけど今。そんな発情したような顔で言われても、説得力が無いってもんです。ついでに言うと、お互いの口に唾液も伝ってますよ。かなり念入りに、舌と舌を絡め合ったんで。  「好きな者同士…?今更、何言ってんの『雪兎お兄ちゃん』。俺は今まで、兄ちゃんへの想いを諦めた事なんて片時も無いっての。兄ちゃんだって、本当は俺の事を憎からず思ってるんじゃないの…?」  「うぅ。学校では、『伊勢嶋先生』ね。そりゃ、まぁ俺だって…。久々に再会したらえらくイケメンに成長してたんで、ちょっと心が動かされなくはなかったけど…。じゃなくて!君とはただの、年の離れた幼なじみだから!そして、今では教師と生徒の関係だから。それ以上でも、それ以下でもあり得ない…」  「本当に?本当に、それだけ?俺は、雪兎兄ちゃんに出逢って人生狂わされたってのに…。中学時代、申し訳程度に女の子とも付き合ってみたけど。やっぱり、心のどこかが物足りない…。要は、兄ちゃんに染められてホモの腐男子にされちゃった訳。この責任、どう取ってくれるのかなぁ?」  「責任?責任と来ましたね?…分かったよ。俺も男だ。君の人生は、俺が責任取って償うよ。だけど、約束だからね?重ねて、学校では『伊勢嶋先生』。そして、先生と生徒としての境界線を決して越えない事」  「お、おう。それくらい、お安い御用…。だけど、本当に責任取るって?ぐ、具体的に何してくれるっての?」  「まぁ、落ち着きなさい。学校の外では、昔と同じように接してくれてもいいから。早速だけど、次の日曜日に高崎駅で待ち合わせない?そして…」  「そ、そして…?」  「駅前の、アヌメイトに行こうぜ!推しのBLコミックの新刊が、たっぷり発売されてるんだよ!梢くんにも、お勧めの漫画を見繕ってあげるからね!」  「あぁ。責任取るって、そっち(腐男子)の?ってかそれ、自分が久々に実家近くのアヌメイト行きたいだけじゃん?まぁ、別にいいんだけど…」
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