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行きつけとはいえ、毎日通うわけではない。私が次にスーパー「尾塚屋」を訪れたのは、3日後の月曜日だった。
私にしては珍しく、夕方ではなく午前中。開店後1時間くらいのはずの時刻だったが……。
灰色のシャッターは完全に閉ざされていた。布製ひさしも力なく垂れ下がっている。定休日みたいな有様だった。
とはいえ、そんなはずはない。月曜は営業日であり、事前の告知もなくいきなり臨時で休むような店ではないのだから。
実際、何人かの買物客が店の前をうろうろしている。
「一体どうしたのかしら?」
「ご主人も奥さんも二人とも寝坊というのは、ちょっと考えにくいわよねえ」
「何かの事故に巻きこまれた……みたいな話じゃなければいいけど」
常連客なのだろう。名前は知らないが、顔には私も見覚えある者たちだった。
彼らは口々に、ご主人たち二人を心配している。その気持ちはわかるので、私も会話に加わろうかと思ったのだが……。
そのタイミングで、真っ黒なワゴン車が店の前に停車する。
降りてきたのは、スーツ姿の男たち。買物客とは雰囲気が違っていた。ジロリとこちらを睨みつけると、うるさいハエか何かのように、手で私たちを払いのける。
「どいて、どいて!」
「あんたたち邪魔だよ! 店の前でたむろしないでください!」
私は素直に場所を譲ってしまったが、主婦らしき常連客の中には、真っ向から食ってかかる者もいた。
「あんたたちこそ何様だい!」
「この店の関係者じゃないだろう?」
スーツ姿の男たちは、憮然とした表情で対応する。
「いや、関係者だよ。合法的に品物を引き取りに来たのだから」
「いくら待っても、もうここは開店しないぞ。このスーパーは倒産して、店主夫婦は夜逃げしたのさ」
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