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雨が降りだす。それはすぐに豪雨となり、川を氾濫させた。それぞれの家へ帰宅した二人は、濡れた体を布で拭き、暖を取っていた。
「ユリナ?またアルスと会ってたのかい?」
ラスティは母にユリナと呼ばれ一瞬だけ反応が遅れたが、すぐに「会っていたわ」と肯定する。母は「そう?」と言うと、それ以上なにも言わなかった。母は二人が記憶を取り戻し、愛し合ったなど知る由も無い。
その夜。ラスティの家に司祭が訪ねて来た。このような夜分に司祭が訪問するなど珍しい事であり、それは緊急の要件である事を意味するのだ。
「これは司祭様、どのようなご要件でしょうか?」
「実はですなミオさん。神の啓示がありましてな──」
司祭はラスティをチラリと見ると、ユミナの母ミオに耳打ちする。ミオの表情はすぐに険しくなり、ラスティに部屋へ入るよう伝えた。それは命令にも近い強い口調だったのである。
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