輪廻の終わりに

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何を話しているのだろう?──ラスティは言い付けを守り、自分の部屋のベッドに座ると、司祭とミオの厳めしい顔を脳裏に浮かべていた。 ──あんな怖い顔の母さんは初めてだわ──。 何か悪い予感を払拭できず、不安から彼女はリオンの声と温もりを欲した。 しかし母からは部屋に入るように言われ、外に出る事は許してはもらえないだろと、ラスティは諦めるしか無い。 暫くして司祭が帰ると、ミオはラスティの部屋へと来た。やはりその表情は険しくあるが、どこか悲壮感を漂わせていた。 「母さん?司祭様と何を話していたの?」 ミオは何も答えず、大きなズタ袋に衣類などを詰めこみ始めた。 「母さん?」 「早くこの家から出て行きなさい!」 ラスティはその言葉を理解出来なかった。素直に取れば母が家を追い出そうとしている。 「どうしてなの母さん!?あたし何か悪い事した!?リオンと会ってたのがいけな──」 ハッとして口を塞ぐが、ミオはしっかりと耳に捉えていた。 「司祭様の仰る通りだったのね……。ユリナ、あなたは滅んだジルヴァーナ帝国の姫様……ラスティなのね?」 「あ……」 否定は無駄だと悟り、ラスティは重々しく頷く。そんな彼女をミオは強く抱き締めた。 「あなたが何者であろうと私の娘に変わりないわ。すぐにこの村から逃げて!司祭が仰っていたの!あなたとアルスを殺さなければ村が滅びると神様からお告げがあったそうよ!」 「どうしてあたし達を殺さなくちゃならないの!?あたしはただリオンと幸せになりたいだけなのに!」 涙で訴えるラスティに、ミオは袋を抱かせる。彼女もまた涙志手あたのだ。 「神様には逆らえない。でも私は母親としてあなたを殺させない。だからお願いよ。村から逃げてアルスと遠い土地で幸せになりなさい」 「母さん……」 「急いで!じきに司祭様が男衆を連れて来るわ!父さんが帰って来る前に早く!」 父ボブソンは熱心な信者であり、その狂信的な彼なら、例え我が娘であろうと慈悲はかけない。それをミオは良く知っていたのである。
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