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 ある日のハチ公前。 「えーっと、青のジャケットで、ユニクロの袋……あ、あの人!」 「ヒマワリ柄のワンピースで、ポニーテール……あ、あの子!」 「あの、もしかしてdeaitai.comの」 「あ、そうです。は、はじめまして」 「あの、失礼ですが、写真とだいぶ違いません?」 「は? そっちだって、なんかケバいですよね?」 「はぁ? 初対面でケバいって言う? サイアクじゃん、サギ写の男にそんなこと言われる筋合いないんですけど」 「こっちだって騙されて、気分悪いんだけど」 「あー、もー、時間の無駄だったわ。ないわぁ。さよなら」 「こっちこそ、時間と金の無駄だっつうの。ブースっ!」  そんな大喧嘩を少し離れたオープンカフェで見ていた一組のカップル。 「あらあ。派手にやってるね。あちらさんもアプリでかな」 「そうかも知れませんね」 「勘違い、というか、勝手にイメージ作っちゃう可能性もありますからねえ」 「あ、ワタシは、思った以上のステキな方だったので、とても嬉しいです」 「そんな風に言ってもらったら、ほんと、幸せです」 「はい、よろしくお願いします、マサルさん」 「え? ボク、コウジです」 「え? ウソ」 「あの、もしかして、ミキさんでは……」 「はい、ワタシ、サオリです」  慌ててスマホを取り出し、お互いの写真を確認する。そして、ゆっくりと、先程の喧嘩してた二人の方を見る。 「あっちの子だ」 「あの人だ」 「どうしよう」 「どうしましょう」  同じ場所、同じ時間、同じアプリで待ち合わせした二組の男女。 「えっと、改めまして、コウジと言います。ボクでよければ」 「あ、サオリです。はい、ワタシの方こそ、よろしければ」 「「これからもよろしく」」  そして、顔を見合わせて吹き出してしまった二人。とりあえず、後でややこしくならないよう、その場でdeaitai.comを退会し、アプリを削除し、LINEの交換をする二人でした。 【めでたし、めでたし】 ……なのか?
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