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玄武が振り下ろした刃は、そのまま真っ直ぐに芥辺の首元へと向かっていった。
「……?」
だが、首を落とすどころか、芥辺の皮膚すら斬れていなかった。
ふと、玄武は胸元に違和感を覚えた。次の瞬間、視界が一気に赤く染まり、同時に激しい激痛に襲われる。
「う"あ"あ"」
見ると、自分の右胸から左胸にかけて、深々と芥辺の刀に横一文字に斬り裂かれていた。
「が……は……」
口から真っ赤な血を吐き出した。
「ひゃは……最高だ……!!俺の血が、こんなに沢山……出てるじゃねえかァ!!」
玄武は嬉しそうな声を上げると、腰をビクンと跳ねさせた。その反動で失禁してしまう。
「あ〜気持ち良いなぁ……!あんたに斬られるのが気持ち良すぎ…て……漏らしちまった、ぜ……!」
玄武は満足げな表情のまま、その場で白い着物を赤と黄色に染めた。
「……」
芥辺は黙したまま、玄武を見つめる。
「やっぱり人斬りのあんたに斬られて…死ぬのが一番幸せだ……!俺が俺の血を……浴びている……あぁ、あんたの刀は……冷たくて……心地良かったぜ……。俺の最期の相手になってくれて……ありがとよ……」
何度も腰をビクンビクンと痙攣させながら、玄武はまるで達したかのように恍惚な笑みを浮かべていた。
芥辺は正直引いていた。
(こいつ、本当に狂ってやがる)
「あぁ……俺の体ももうすぐ動かなくなってきたな……血を流しすぎたみてえだ」
「……」
「最後に一つだけ聞かせてくれ」
「なんだ」
「俺の斬られっぷりは……どうだった?最高に綺麗な死に様を……見れたかい……?」
「知らん」
「ヒャハハッ!冷たいねぇ」
「お前のような狂人の死に様など興味はない」
「……まぁいいや…………そろそろお別れの、時間らしいぜ」
「……」
「あんたに出会えてよかったぜ……京介さんよォ……」
玄武はそう言い残すと、静かに目を閉じた。
「……」
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