狂い咲き

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その浪人は血に餓えていた。血を求め毎夜毎夜人を斬っていた。他人の生き血を吸うかの如く人を斬り続けたが、彼は─玄武は決して満足することは無かった。 玄武が求めるのは他人の血ではない。自身の血なのだ。自身の身体より吹き出た血を浴びながら死ぬのが夢だった。 だが厄介なことに自死では満足しない。それでは美しくないからだ。他人の手によって死にたいのだ。それもただ殺されるのではなく、凄惨な殺され方でだ。相手に蔑まれながら容赦なく命を奪われてこそ、初めて己の死は美しいものとなる。 だから玄武は探しているのだ。己の身体を、着物を美しく血に染めながら殺してくれる猛者を。
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