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小太刀のグリップには滑り止めとして、丁寧に布が巻き付けられており、クロードの几帳面さが表れている。僕もグリップには気を使うほうなので、装備品選びで話が合ったかもしれない。
血に染まったバンダナはまだ布地が真新しく、新調したてに見える。身だしなみにも気を配るタイプだったのかもしれないし、クリスからの贈り物かもしれない。
腰にぶら下げた小物入れには、文庫サイズの本が収められていた。識字率の低いこの世界では珍しい所持品で、クロードへの親しみはより強まった。けれど残念なことに、胸からの出血のせいで中身は真っ赤に染まっており、解読はできそうにない。
これらを選択してクエストに持ち込んだことが、彼の人となりを示し、彼の人生の一端を表している。
僕は物言わぬ彼を目の前にして、時間をかけてクロードという冒険者を感じ取った。
結局、遺品として持ち帰るのは、刀身こそ折れているが痛みの少ない小太刀に決めた。また、毛髪も一束拝借して、小太刀と合わせて丁寧に布で包んだ。
そして、先ほど二人組の冒険者から回収した、クロードが掘削したであろう鉱石。これを持ち帰れば、クリスとクロードの最後のクエストは無事に達成されるはずだ。
最後に合掌をして、クロードに別れを告げた。この世界の作法とは異なるし、転生前も信仰心などなかったくせに、習慣というものはなかなか抜けないらしい。
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