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ギルドへ戻ると、クリスが怪我を押して待ち構えていた。僕と二人組の小競り合いが耳に入ったのかもしれない。
「遅くなってすまない。依頼は無事に達成したよ」
僕はあえて素知らぬ顔で、回収した遺品を手渡した。合わせて、クロードの最期の状態を細かに伝える。
「本当に……なんてお礼を言っていいか。あの、遺品を確認してもいいかい?」
僕が頷き返すと、クリスは恐る恐る布の包みを解いて、小太刀と毛髪を手に取った。
「僕の生まれた場所では、故人の形見として遺髪を残す文化があるんだ。遺体を傷つける意味ではないから、気を悪くしないでほしい」
「ああ、大丈夫。この辺りでも珍しくない風習だよ」
クリスは小太刀を胸に抱くと、暫し俯いた。長い赤髪で隠れてしまった表情を想像して、動機が激しくなるのを感じる。
僕は、何を求めてこのクエストを受けたのだろう。お隣のお姉さんの顔がよぎり、左手に長髪の男を突き刺した感触が蘇る。
やがて顔を上げたクリスの表情は、憑き物が落ちたような柔らかい表情を浮かべていた。そして小太刀に向けて、クロードの魂がそこに宿っているかのように優しく語りかけた。
「これからも……よろしくね」
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