霊媒少女との出会い

2/12
前へ
/59ページ
次へ
 もちろん、結果は火を見るより明らかで、千佳たちのチームは敗戦が決まった。三年生は最後の大会に出場する機会を失って、トラックにへたり込んだり、地面を叩いて悔しがったりした。  千佳は感情の機械がショートしたかのように茫然となった。涙が出て、嗚咽をもらすかと思ったが、意に反して何の感情も湧きあがらなかった。    それからというもの、三年生は戦犯となった千佳を無視した。練習の時も二人一組のストレッチを敢えて組まず、千佳を孤立させた。  下級生も三年生の目を気にして加担する形になった。確実に部内でのいじめの輪が波紋のように広がった。  千佳は修復を試みようと、積極的に部員たちに話しかけたが、誰もが千佳を空気のように扱った。  コーチがついに、部内の空気を読んで、しばらく休部してくれないかと千佳に申し出た。なぜ?わたしが何をしたというの?バトンを落としてしまったことは謝ったし、三年生が最後の大会に出られなかったのは残念だったが、これで彼女たちの人生が終わった訳ではない。なのに...。  千佳には誰も味方になる人はいなかった。悔しいを通り越して呆れた。わたしは陸上部でムードメーカーで、アンカーを任されるほど信頼があって、傍から見れば、誰もが羨む境遇だ。それは今思えば、仮初めの姿だった。所詮、わたしたちの幸せなんて、張りぼてでできている。  十七歳にして、千佳は人生最大の挫折を味わったのだ。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加