霊媒少女との出会い

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 周りでは恋人を作って、日曜日などはデートをして青春を謳歌していた生徒もいたが、千佳は色恋沙汰に関心がなかった。  だから、クラスメートの心無い奴らが、陰で千佳のことを、走るだけしか脳のないやつと罵っていたことも感づいていた。  自分は強い方だと思っていた。陸上部でアンカーを務められるほど、プレッシャーにも強いと思っていた。だが、その強さは本物ではなかった。  結局、千佳は現実から逃げた。自殺という卑怯な方法で。  千佳は古本屋で「完全自殺マニュアル」なる本を読み、何が一番楽な自殺方法かを検討した。  さんざん迷った挙げ句、首を吊ることを選んだ。この方法が金もかからないし、場所もとらない。  自殺をする人間には死神が憑りついていると言われるが、千佳にも憑りついている可能性がある。  父親と母親の仲は、この前くらいから悪くなり、朝の食卓では会話もなく、夜中に夫婦喧嘩をして、怒った父親が家を飛び出し、帰って来ない日もあった。  つまり、もう、千佳がSOSのサインを出したところで、両親の目には入らないのだ。絶海の孤島で発煙筒を飛ばしているようなものだった。  母親の勘だろうか?千佳が天井の梁に麻縄をかけて椅子に乗り、縄に首を通して、椅子を蹴った時に、椅子が激しい音を立てて倒れた。いつもなら、ちょっとした物音でも無視する母親が、第六感か、心配してノックもせずに、部屋に入ってきた。  母親は宙にぶら下がっている千佳を見て、腰を抜かした。オロオロするばかりで何もできずにいた。千佳は首を吊ってから3分以上が経過していた。
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