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男は送られてきたデータを眺める。並ぶ数字の列を見て、僅かに口に緩みが浮かぶ。
リンゴの数字を知っている。ミカンの数字を知っている。綿の、絹の、木の、金属の、同僚の女性技術者の枯れたような手の数字を知っている。
男は少女の顔を知らない。男が崇拝するのはウィエであり、華やかなアイドルである。中身ではない。ウィエと年格好が近いだけの無名の少女に興味はない。
ウィエならば。VRIならば。男の欲しい言葉をくれる。見捨てず男を見守ってくれる。結婚も無い、失望も無い。永遠に。永久に。
そのウィエに『触れ』られる。
男はデータを確認する。五色の手へとそのデータを流し込む。
――さぁ、握手を!
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