不老不死を求めて

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研究機関のいう『不老不死』の概念は独特なものだった。 身体の細胞再生サイクル機能の低下が『老い』、『老い』は身体をパーツと考えてクローン技術で補う。パーツの更新を可能にすればそれが『不老』となる。 『不死』は『脳の完全な複製』思考も感情も完全に複製、コピーする。 最新のパーツ(身体)にコピー(複製)の脳を埋め込めば『不老不死』の完成。 これが研究機関の不老不死の概念だった。 身体を失った修の脳は研究・開発に打ってつけだった。研究者としての知識も人を愛する感情も持ち合わせているのだから。 液体コンテナを通して修の脳に装着された様々な機器は修の思考も感情も壁面のモニターに表示される。パーツさえ装着すれば声を聴くことも話をすることも可能だ。 それでも私は後の15%、完全な修の脳の複製ができるまでパーツは装着しない。だって、完成すれば完全再生された身体と融合することができるから。 修にもう一度言って欲しい。 『雫、これからもよろしくな』って。 ポコポコと水泡が上がる液体コンテナの中にいる修の脳に私は微笑みを向けた。
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