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「今井さぁん、お体の調子どうですか?」
暖かな日差しが差し込む病室に、のんびりとした看護師さんの声が響き渡る。
「なんだかねぇ。今日は、いいことがありそうな気がするよ」
「良いこと、ですか? あ、そうだ。今日はお孫さんいらしてましたよ」
「ああ、それは、うれしいなぁ」
天井でいっぱいの視界に、彼女の顔が入り込む。にっこりと明るく笑ってくれた彼女の顔が、向日葵のように見えた。
体はもう思うように動かない。起き上がることなんてできないし、手や足、指先さえ思い通りにならない。枯れた枝のような体躯のはもう長く点滴しか摂取していない空ろなもので。
――ああ、今日はいいことがありそうだ。
窓から射す、己を包む陽光はまるで楽園へと続く光の道。
その先へと手を伸ばした途端、ふわりと自分の意識が曖昧になっていくのを感じた。
「今井さん、お孫さんいらっしゃいましたよ。今井さん? 今井さん!」
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