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お互いに「何でこんな所に」と、言い合う。
そして、互いに、何故、ここに居るかを話し
「みな、駿貴様のお計らいでしたか」と、駿貴の思いやりに触れ
「何と言う、優しい、お心の広い、お方であろうか」と、言い合った。
「その駿様の、期待に応えねばな」菊也は、そう言ったが
「それは、かなり難しゅうございますぞ」と、金蔵が言う。
「?何故だ?」と聞いた菊也の尻を、バシッと叩いた者が居た。
「誰だっ」と、振り返った菊也に、べ~~っと、舌を出して
走って逃げた男の子「あのお子様が、司様です」と、ヨシが言う。
「なるほど、、これは、鍛えがいが有りそうだな」
そう言った菊也は、手に持っていた荷物を、ヨシに預け
「待て~っ」と、司を追いかける。
「何か、有りましたか?」と、顔を出した浅黄に
「奥様、司様の、教育係が参りました」と、告げる。
「教育係?」「はい、駿様の、お言い付けだそうで」
「まぁ、駿様が?」と、言っている所に、司を抱いた菊也が、帰って来て
「初めまして、私、有田菊也と申します、若輩者ではございますが
司様の為に、全力で、働きたいと思っております。
どうか、よろしくお願い致します」と、頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願い致します」そう言う浅黄に
「母様、菊也は、私より、走るのが早いです」と、抱かれたままで司が言う。
すばしっこい司に、追いつけるのは、父の信蔵しか居ない。
司は、自分より早く走れる菊也が、気に入った様だった。
「こんな、やんちゃですが、宜しくね」
そう言う浅黄は、駿貴の心使いが嬉しかった。
その日から、司は菊也にすっかり懐き
一緒に遊びながら、色々な事を学ぶようになった。
その様子を、菊也は、詳しく書いて、駿貴に送る。
会えなくても、司の事が、手に取る様に分かると、駿貴は密かに大喜びする。
会えないと言えば、もう一人の娘の麗華は、どうしているだろうか?
楓を見るたびに、にこにこと笑ってくれた、麗華の事を思い出す。
健やかなのか?兄弟は?どんな思いも届かない、遥か彼方の国の娘、、。
ふぅっとため息をつくと「駿様、どうかなさいましたか?」
と、やって来た、晴れやかな顔の、千代丸が言う。
千代丸は、元の様に、寝所にも呼ばれ、太刀持ちの仕事にも復帰して
「暫く待てと言った、駿様の、言葉通りだった」と、喜んでいた。
「何でも無いよ、それより、また母上の所へ行っていたのか?」
「はい、今日は、和歌の勉強をしました」菊也の所為で、暇になった千代丸を
典子の所へ連れて行き「嘆いているより、勉強をしろ」と、言われた千代丸は
和歌や、茶の湯等を、典子から、教えて貰っていた。
典子は「傷ついた、可哀そうな子供なんです」と、駿貴に、世話を頼まれたが「典子様は、お優しくて、母上みたいだ」と、懐いて甘える千代丸を可愛がり
まるで、母になったかの様に、優しく和歌や茶の湯の手解きをして
二日も顔を出さないと「どうしたのでしょう?」と、心配する程だった。
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