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ある日、帝は、久しぶりに姉を訪ねた。
すると、庭で駆け回っている、可愛い男の子が居た。
「姉君、あの子は?」「私の孫ですよ」「孫~?」帝は、変な声を上げた。
それ程驚いたのだ。
「はい、駿殿の子供です」「それが、何でここに?」
「実は、、」藤乃は、事情を説明した。
「なるほど、そんな事が、、」そう言って、見ていると
「婆様、この人は?」と、司が聞く。
「婆様の、弟で、帝ですよ」「帝?帝って何ですか?」
「日本で一番、偉い人ですよ」「ふ~ん、帝様は、独楽回しが出来ますか?」
「いや、出来ぬ」「日本で一番偉いのに?」司は、不思議そうに聞く。
「一番偉いから、出来ないんですよ」と、菊也が、助け舟を出す。
「何で?」「大変な、お仕事が、一杯有って、独楽を回している
暇が無いからです」「可哀そうだね」司は、同情する目で言う。
「面白い子だな~」帝は、司が気に入り、自分の子供と遊ばせる事にした。
自分の様に、独楽も回せない大人になって欲しく無かったのだ。
「この子に、色々な遊びを教えてやってくれ」「良いよ、おいで」
司と、帝の子は、直ぐに仲良くなり、一緒に遊ぶようになった。
その様子を、細かく書いた手紙を、菊也は、駿貴に送る。
父の屋敷では、一緒に遊ぶ子供など、いないだろうと、心配していたが
「楽しく、遊んでいる様だな」駿貴は、次の手紙を、心待ちにする。
その後、駿貴に、朝廷に出仕せよと言う、命令が来る。
「何だろう?」と、行って見ると「これからは、月のうち半分ほど
実美の仕事を手伝ってくれ、実美も歳だからな」と、帝は言う。
「ははっ」と、承知したものの、何で?と言う気持ちは大きい。
「さすれば、父親への孝行も出来、息子の顔も見られるであろう?」
そうだ、息子として父への孝行も、父として、司にも、何も出来ていない。
「あ、有難う存じまする」帝の思いやりに、駿貴は、目を潤ませた。
「忘れるな、私は、お前の名付け親だ、困った事が出来たら
何でも言って来るのだぞ」「ははっ、この上なき、有り難き、お言葉を頂き
身に余る光栄でございます」駿貴は、畳に頭を擦り付けて、お礼を言った。
と、いう訳で、駿貴は半月は吉沢で、半月は都で暮らす様になった。
「行ったり来たりで、忙しないな」と、長春は愚痴ったが
帝の命令なら、仕方が無い。
吉沢での半月が過ぎると、新八郎をお供に、馬で京へと登る。
屋敷では、実美と司が待っている、そう思うと、馬の走りは早くなる。
そして、京から吉沢へ帰る時も、待っている、志麻や春貴、楓の顔を思うと
自然に、馬を飛ばしてしまう。
自分を、待ってくれている人が居る、本当に幸せな事だと、思う。
フウラン、麗華、隼人、お前たちも、待っているだろうに、、、
フウランは言った、会えば必ず別れが有ります、それが、この世の定め
その別れが、明日なのか、一年先なのか、10年先なのか
知っているのは、神様だけ、だから、この一瞬一瞬が、とても大事なんですと
そうだ、浅黄が、あんなに早く逝ってしまうとは、思っても居なかった。
もし、それが分かっていたなら、もっと違った接し方をしていた筈だ。
そう思ってからの駿貴は、この一瞬に、自分の全てを込めて
悔いの無い一瞬にしたいと、思う様になっていた。
透哉、改め駿貴、10代から20代になって
少し大人になった頃までの、お話でした。 (完)
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