戻ってきてからのこと

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 そういえば、自分がいなくなっていたことに気づいた。いつからなのか、自分がいなくなってから何年経ったのかはわからないが、とにかく僕は自分がいないまま何年も生きていたらしい。しかし、人間は自分なんていなくてもやっていけるみたいで、現に僕は自分がいなくても仕事もしていたし、生活もこなしていた。ただ、自分がいなかったから、これまでのことはなんとなくは覚えているんだけど、甚だ実感がない。実感がないまま気づけば四〇歳を過ぎていて、これは怖いことなんだろうけど、いなかったから仕方のないことなのだろう。  今日は自分が戻ってきて初めての週末だったので、とりあえず部屋の片づけをする。戻ってきて一番驚いたのは、部屋の汚さだった。どこもかしこもゴミだらけ。ここはゴミ屋敷かと思った。目立つのは弁当やカップラーメンの食べた後の容れものと、チューハイの空き缶。それにそれらを適当に入れたゴミ袋の山。一つや二つじゃない。  これらのことから想像するに、自分は仕事を終わると、適当に弁当やカップラーメンを食べ、チューハイを飲んでいたのだろう。よくこんな汚い部屋で平気で飲み食い出来たなと感心するが、そんなことも気にならないくらい病んでいたのだろうか。自分を治療するような気持ちでゴミを分別していく。
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