マッチングアプリのサクラ

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「お疲れさまでした」  私は、会議室に通され社長と向き合っている。 「おかげでまた一人、規約違反者を強制退会させることが出来ました」  そう言って彼女は微笑む。私は用意されたお茶に口をつけながら 「えぇ。こちらこそ、もともと当社で依頼を受けていたものですし……結果的に不倫の証拠をつかむことが出来たので一石二鳥です。ついでに『既婚者である』という証拠もつかむことができたので、社長のお役に立っているのでしたら光栄です」 「本当に助かってます」  社長はテーブルの上で両手を組む。 「私は、このマッチングアプリを『真剣に恋人、配偶者を探している者』のために運営したいのです。ですが、『ヤリ目』がごまんといるのが現状。特に『出会いを探しているフリをしている既婚』は最もタチが悪い」  社長の表情がゆがんだ。手を組んでいる赤く塗られた爪が彼女の手の甲に食い込む。それくらい、『ヤリ目』という存在が許せないのだろう。正直、私も強くそれに共感する。 「はい。それをあぶりだす為に私ども探偵が存在しているのですから」 「いつもいつも本当にありがとうございます。こちら、今回の報酬です。おおさめください」  社長から書類が渡される。そこに印されているのは悪くない金額だ。私は口角をあげながらそれを受け取る。 「たしかにいただきました」 「私たちは一蓮托生、これからもよろしくお願いしますね」  社長が席を立つと私に手を差し出してくる。 「はい、今後とも我が探偵事務所をご贔屓に」  私も立ち上がって音を立てながら社長とかたい握手を交わす。それは、タッグでやるスポーツでナイスプレーを決めた時にパートナーとハイタッチする音によく似ていた。
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