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 この数ヶ月、 Metis(メーティス)とのやりとりは楽しかった。  どんな質問でも、納得できる答えを返してくれた。  おかげで、いまひとつパッとしなかった仕事もプライベートも、少しずつ充実し始めた。  損得に関係なく、すぐそばで何でも教えてくれる、知恵の女神。  それが突然「有料版にアップグレードしませんか?」だって?  「有料版」という言葉が目に入った瞬間、スッと冷めたのが自分でもわかった。  知恵の女神も、いきなり壺を売り付けようとすることがあるんだな。  無償の愛と知恵を授けてくれる女神なんて、この現代にいるわけないか。  僕のMetisに対するイメージは、一瞬で崩れ去った。  所詮は、Metisもビジネスなんだ。  裏に誰かがいて、ルールも仕組みも全部決められているんだ。  もしかしたら僕の質問も、裏にいる人たちには簡単に見られるのかもしれない。  規約にはなんて書いてあったっけ?  見られて困るような質問はしていないと思うが。  いや、「同期の恋愛感情を確認するには?」なんて、十分に恥ずかしい、見られたら困る質問と言えるかもしれない。そんなプライベートに踏み込んだ質問を投げかけてしまうほど、僕はMetisにどっぷり依存していたんだな。  なんだか、急にバカらしくなってしまった。  いっそ、Metisはアンインストールしてしまおう。  スマホを手に取り、Metisのアイコンを長押しする。  いや、ちょっと待ってよ。  調べ物だけは、Metisを使ったほうが、絶対にはかどる。  30分の仕事が、5秒で済むのだから。  アンインストールしてしまうのは、まだ早急かもしれない。  大事な意思決定の時に依存しなければいいんだ。    もう少し、アンインストールせずに少し残しておこう。  もう少しだけーー。
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