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ツカサには高校二年生になる姉がいる。
その姉ちゃんがつける、鼻の奥がむずむずするきつい香水のにおいでもなく、自然で優しい香りだった。
いつまでもかいでいたい、いい匂いだ。
って、オレ変態かよ!
どうかしている!
ふるふると頭を振り、ツカサはじっと先生の後ろ姿を見つめ立ち尽くしていた。
そう、莉菜の好きとも小坂の好きとも違う、胸の奥がキュッとするような痛み。
これは、いったいなんだろう。
不思議なことに、この感じは先生の前でしか起こらない。
「ツカサくんって、荻久保先生の前だと、すごく素直だよね」
いきなり莉菜に声をかけられ、ツカサは肩を跳ねあげた。
すっかり、隣にいる莉菜の存在を忘れていた。
まったくの素の状態で声をかけられたのと、ずばり言い当てられたことに、ツカサはうろたえる。
「そ、そ、そんなことねえよ!」
口ごもるツカサに、ふーんと、莉菜は唇をとがらせのぞき込むように、じいっとこちらを見る。
「そうかなあ」
「か、帰るぞ!」
ツカサは恥ずかしさを隠すように、大股で歩き出した。
「待ってよ、ツカサくん」
後ろから莉菜も小走りで追いかけてくる。
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