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1 鶇巣ツカサと、幼なじみの莉菜
五年二組、鶇巣ツカサと書かれたげた箱のふたを開け、ツカサは上履きから靴に履きかえた。
下校時間を告げる緩やかな音楽が校内に流れる。
大勢の生徒が嬉々とした表情で学校を去っていく。
明日は学校は休み。
みんな、休みは親と出かけるとか、今日は夜遅くまでゲームをするとか言って浮かれている。
西日射す昇降口。
茜色に染まる空を見上げ、ツカサは手にした傘に視線を落とす。
天気予報では、午後から大雨だと言っていたが、雨なんか降る気配はない。
どうやら予報は外れたようだ。
もてあまし気味に傘を軽く振っていたツカサは、ふと、思いついたように傘の柄に空手着をぶらさげ、肩にかついで出口に向かって歩きだす。
「ツカサくん、待って!」
背後からかけられた声に振り返る。
隣の家に住む、幼なじみの藤木莉菜が、手を振りながら走ってくる。
莉菜とは幼稚園からずっと同じクラスの腐れ縁だ。
だからよく、クラスの連中に、おまえら好き合ってるんだろ? と、からかってくるが、ツカサにはいまひとつそういうのがわからない。
好きか、キラいかっていうなら、莉菜のことは好きだ。
明るいし、一緒にいて楽しい。
幼なじみだから、気をつかわなくていい。
だけど、同じくらい親友の小坂祐二も、とぼけた奴で大好きだ。
その好きとは違うのか。
よくわからない。
でも……。
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