1 鶇巣ツカサと、幼なじみの莉菜

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「ねえ、ツカサくん。来月あたしの誕生日なんだ」  ありがたいことに、莉菜もそれ以上、先生のことにかんして突っ込んでくる気はなさそうだ。  他の女子みたいにしつこくないところが、莉菜のいいところだ。 「そういえば、そうだったな」  莉菜に言われて思いだした、という素振りをみせたが、ちゃんと覚えている。 「今年も誕生日会、来てくれるよね」 「別に、いいけど」 「ママがご馳走いっぱい作るって言ってた。今年はハンバーグを作ってって、お願いしたんだ」 「へえ」  先ほどの照れを引きずってか、ぶっきらぼうに答えるツカサだが、内心手を叩いて喜んでいた。  なぜなら、莉菜の母ちゃんお手製のハンバーグはめちゃくちゃおいしいのだ。  とくにデミグラスソースが最高で、毎日食べてもいいと思うくらいうまい。 「それでね、あたし、プレゼントはツカサくんとおそろいのキーホルダーが欲しいなあ。ランドセルにつけるの」  立ち止まって莉菜を振り返る。  ちゃっかり、プレゼントのリクエストか?  もちろんそれはOKだ。  問題ない。  あらかじめ欲しいものを言ってくれたら、こっちも悩まなくていいから助かる。  だけど!
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