企画の書

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こんじょうのわかれをいまここに れんぼのじょうもついえて かれたこころはいまどこに らしくもなく つたうすいてきつちにすう もろくもくずれおちたひざには よすがとねがったきみのかみ ろうばいのはなもちり ししてもなお きみおもう くらい やみのはてにも 《うむ、何をやっとるのだ?》 「何って鳴かず飛ばずで非業の死を迎えた名も無き詩人の、素敵な作品を今アップロードしたところだけど?」 《な、なぜそのようなことを》 「あなたの生きてた時代は分からないけど、今の時代はね、誰でもどこでも創作を世界にお披露目できるの。骨董市で一目惚れした万年筆にあなたが取り憑いていたのもなにかの縁。私、あなたの作品が気に入ったのよ」  目の前に、いかにも幸の薄そうな着物姿の青年が首を傾げて不思議顔をしている。  おまけに私好みのイケメンだ。  正直、その理由も結構あったりする。  万年筆の蓋をとった瞬間、彼の想いが流れ込んできた。  その瞬間、使と思ったのだ。  けれども彼が喜ぶ姿を、そして彼の実力をどこまで通用するのか試してみたい気にもなったのだ。 「あなたが見ることが出来なかった夢を、私手伝いたいの」 《ほう、随分と殊勝なことを》 「そんで簡単にバズって、夢は書籍化! アニメ化! 印税生活で左団扇っ!」 《うむ、何を言っているか皆目分からないが、我も目指すのであればテッペンを取りたいというものだ》 「でしょ! 夢は常におっきくよね! そのためにはあなたの協力が必要なの」  すっと私は右手を差し出す。  意図がわかったのか、彼は握り返した。  万年筆のようにヒヤリとした感触で。 《うむ。我の言葉をよろしく頼む!》 「うん。これからもよろしくね!」  こうして、私と彼との奇妙な共同作業が始まったのだった。
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