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待ち合わせ場所は静かな公園だった。
まだ夏の暑さが残る陽射しを避けるように、日陰になったベンチで心優しき友人は待っていてくれた。
「竜也」
私は竜也も苗字で呼んだことがない。
親しい友人たちは大抵名前を呼び合っている。ということは、私は友人の座からも蹴り落とされたのだと今思い知らされた。
「モモ――いや、蝶野。早かったな」
「……なんで言い直すの?」
まさかここでも突き放されるとは思わなかったため、私は半眼で竜也を睨んでしまう。
俺はどちらの友人でもあるけど、あっちの味方だぜという遠回しな決意表明だろうかと邪推してしまう。
「な、なんで睨むんだよ。いつも変なあだ名で呼ぶなって怒るだろ」
「だからって、今急に変えないで」
「真面目な話をするから、一応気を遣ったんだよ」
どうやら振られた私に配慮してくれていたらしい。
確かに今は笑って冗談を言えるような心境ではない。だが、誤解を招くような言い方も止めて欲しかった。
「普通に呼んで」
「あぁ……わざわざ呼び出して悪かったな」
緊張した面持ちの竜也はかなり切り出しにくそうにしている。
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