蝶とトルネード

「よかった、モモがちゃんと受けとめてくれる奴で」
　私が現実逃避するとでも思ったのだろうか。竜也のほっとした顔を見ると無性に腹が立ってくる。だって私が経験したことは喜ばれることではない。
「よかったって何よ、よかったって」
「うっ、そうだよな。まだ結末はわからないものな。早とちりした」
　結末なんてもうとっく出ているし、早とちりも何も振られた時点で何もいいことなんてない。
　竜也は天然というわけではないが、偶にずれたことを言う。でもこんなときに言わなくてもいいと思う。
「私は付き合うとかもうどうでもいいよ。こうなることもなんとなく感じていたし」
「そんな諦めたような言い方することないだろう。重大なことなのに、モモの気持ちが大事だろ！」
　なぜここで竜也が熱くなるのか、さっぱりわからない。
　だけど、言われた通り私の気持ちを考えてみた。
　まだ好き、諦められない、許さない。　　
　そう言って桶谷くんに縋り付けばよかったのだろうか。
　いや、そこまではしたくない。これで、答えは出た。
「私は納得しているよ。ただ、突然だから戸惑っているだけ」