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「長ければいいってもんじゃないでしょ。大切なのは気持ちよ、気持ち」
小気味よいテンポのやりとりに浮上してきた気分を蒸し返されるのは嫌だが、このままでは竜也が納得しそうにないので私が折れることにした。
くれぐれも傷を抉るような真似はしないで欲しい。
「そうだな。気持ちだ、俺の気持ちを聞いてくれ」
なぜ振られたことを知った友人の気持ちを聞かなくてはいけないのか甚だ疑問だが、竜也の真剣さに押されて私は神妙に頷く。
「モモは桶谷が好きだと思っていた」
そこからかと、私は思わずため息をつきたくなる。
「だから、それは納得しているって――」
「あぁ、気持ちの変化に気付かなかった。悪かったな」
竜也が気付かないのなんて仕方がない、何せ友人なんだ。でも彼女の私がそれでは駄目だった。そう、私は心変わりを察知できなかった。
私は自分が思っているよりも彼を見ていなかったのだろう。
「そうだね、いつの間にこうなっちゃったんだろう」
俯いてしまえば、竜也の声が陰るのがわかる。
「やっぱり好きなんだろう? 無理しなくてもいい」
「……好きだったんだけどね」
「本当に過去の話なのか?」
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