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肩を掴む竜也の手が力強くて少し痛い。それに顔が近い。
「ちょ、ちょっと、近いから離れてよ。私は足掻かないって言ったじゃん。大体、もう新しい彼女がいるのに私の抵抗なんて無駄だよ。世界も、桶谷くんも何も揺るがない、変わらない」
「はっ? 新しい彼女?」
桶谷くんは彼女の話はしていなかったようだ。もしかしたら自分に都合の良いように話をしたのかもしれない。でももうばらしてしまった。
「そうだよ、なんて聞いたか知らないけど。桶谷くんは新たに好きな人というか彼女が出来た。それが私たちの別れの原因だよ」
「な、なんだよそれ」
竜也の混乱ぶりから、原因は私が悪いとでも言っていたのかもしれない。自分の過失を人のせいにするとはいただけない。
「薄々予感……足掻く、彼女……そっか、そっか……」
勝手に一人で納得しはじめた竜也は何やらぶつぶつと独り言をつぶやいているが、やがて晴れ晴れとした顔つきになる。
「モモはもう別れたことに納得しているんだよな?」
「だーかーら、しつこいな。もういいよ」
何度目かの答えに私は心底うんざりして返した。
「悪い、最終確認だ」
「あっそ。それで、竜也の気持ちとやらは何よ?」
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