蝶とトルネード

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 薄々こうなることはわかっていたのかもしれない。  それを引き延ばしにしてきたのは私だろうか、彼だろうか。  付き合って三ヶ月、今日を含めてデートしたのはたった三回だけ。いや、今日はデートに含んではいけないだろうから実質二回だった。 「ごめん。実は他に付き合っている子がいるんだ」  好きな人ができたという相談ではなくて、もうすでに付き合っている人がいるという事後報告を聞いて、それじゃあ私はいつ振られたことになるのだろうかとぼんやり考えた。 「怒っているか、蝶野?」  以前は百華と名前で呼んでいたのに苗字で呼ばれ、突き放された気がしたと同時にわかってしまった。 彼にとってこれはただの報告であって義務にすぎず、私の返事など必要ないと。  やっぱり、私が振られたのは今日ではなく新しく彼女ができた日なのだろう。 「ううん、別に。じゃあね、桶谷くん」  だから私は一度も呼んだことのない呼び名で極めてそっけなく別れを告げた。だって、この人は幾日も前から私の彼氏ではなかったのだから。
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