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背中をつつかれる
自宅のベランダのドア越しに寝っ転がって外の景色をながめているときに、背中をトンとつつかれる感触がする時がよくある。部屋には自分以外誰もいない時に。最初は背中の筋肉の一部が引きつったのかと思った。ただ、ここは先祖から代々引き継がれた家である。先祖の霊的なものの仕業とも考えられた。俗に言う怖い話という認識でいいだろう。
自分以外、誰もいないはずの部屋で突如背中をトンとつつかれるのである。何度も続けば次第に怯えてくるものだ。
ある日、悪友を家に呼んで遊んでいた。いつも通り、2つ折りにしたクッションを背中に敷いて寝っ転がってベランダのドア越しに景色をながめていた。悪友はその後ろでヒトデ頭の王様がよくやるカードゲームの山札の構築をしていた。姿勢を少し起こして暫くしてから、いつものように背中をトンとつつかれた。
「きたっ! いまっ! 背中にきたっ! 今まさにトンとつつかれたっ! 何かいるかっ!?」
悪友に聞こえるように、叫んだ。
「誰もいない。ただ……」
その言葉を聞き、ゆっくりと悪友へ振り向く。その後、悪友は歯切れが悪そうに口ごもり、言いにくそうにゆっくりと続きを話した。
「今……お前が背中に敷いていた2つ折りにしているクッションがだな……姿勢が変わった時にゆっくりと元の形に戻ってだな……端っこがお前の背中にトンと……」
それって……。
「伏せ札開放! 『背中トン』!」
「やかましい!」
悪友の発した言葉に対して、反射的に盛大にツッコんだ。
俺をおちょくった悪友に対する反撃である。
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