いつもの自販機

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いつもの自販機

 毎朝、通勤途中でいつも飲み物を買う自販機がある。そこで、前に飲んだ飲み物の空容器を据え置きのゴミ箱に捨て、新しい無糖コーヒーを1本買うのが日課となっている。そのゴミ箱は自販機の裏にあり、少し姿勢を前屈みにしながら腕を伸ばさないと届かない位置にある。  今日もお金を自販機入れて、空容器を捨てるべく、前屈みになり、容器を持って腕を伸ばし捨てようとしたが、石に躓きよろめいた反動で、肩がスポーツドリンクのボタンに当たり、ペットボトル入りのスポーツドリンクが出てきた。 「もうぅ」  飲む気がない物が出てきてめちゃくちゃ凹んだ。気を取り直して再度お金をいれ、いつも押している位置のボタンを押そうとした。上段の1番左から3番目である。毎朝の日課で体が覚えてしまっていて、無意識にできてしまう程回数をこなしている。今回もいつもの要領でボタンを押そうとした。その先に視点を移すと、一瞬、ココアという文字が目に入ってきた。商品の配置を入れ替えたのだろう。ボタンを押す勢いは止まらず、そのまま押してしまい、缶入りのココアが出てきた。  3回目でようやく無糖のコーヒーのボタンを押せた。だが、この一連の流れで焦っており、1本ずつ取り出していないことにようやく気づく。取り出し口に3本溜まり、引っ掛かって取り出せなくなってしまっていた。  まずスポーツドリンクが1番下に、その上にココア、1番上に無糖コーヒーが順番に重なっている。取り出し口に手を入れて手をグーの形に握りしめ、金槌で釘を叩く要領で、何回もココアを横から叩いていく。すると、ココアが叩かれる度に少しずつ横へズレていき外れた。何とか3本の取り出しに成功した。そのおかげで、手を何箇所か擦りむいてしまった。  いつも利用している自販機からの反撃である。
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