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パソコンの電源を入れて、いつものログイン画面が映し出されるのを待つ。
私の右手に持ったマグカップには、甘くないカフェオレ。氷が浮かんで、くるくると回りながら、少しずつ味を薄めていく。
口からため息が漏れた。
今日、私は両親に「これからもよろしく」と言った。
つい数日前まで、離婚を真剣に考えていた両親へ。
そして今は、今まで通りの暮らしを選んだ、両親へ。
「これからもよろしく……か」
呟いた言葉は砂でできたお菓子みたいに脆かった。
外に雨でも降っていればまだ、この陰鬱な気持ちもそれらしかったのに。外は忌々しいほどに、蒸し暑い。
離婚するかもしれないと分かった時を思い出すと、今も体の奥で何かわけのわからないものが、わあわあと叫びそうな気がしてくる。
ログイン画面が見えたのと同時、右手がパスワードを打ち込んだ。
キーボードを見なくても文字が打ち込めるブラインドタッチは、父に憧れて習得したんだっけ。
そんなことを思い返しながら、カフェオレをひとくち。
スマホへ通知が来た。
「……あれ、ニシキさん。こんな時間から通話してるんだ」
見慣れたニシキヘビのイラストアイコンを見て、思わず私は通知をタップしていた。スマートフォンのロックを解除して、立ち上がったアプリの通話ボタンを押す。
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