ことのは

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「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」  挨拶を交わして笑顔で問われたが麻衣の心臓はそれどころではない。  昨日のことを思い返すと鼓動が跳ね上がって頬を熱く火照らせる。 「あの……昨日は」 (旅の恥はかき捨て……られないわよ)  変わらぬ笑顔で促されたテーブルにはサラダを添えたベーコンエッグとトースト。気まずく腰を落とした麻衣にコーヒーを注いで肩をすくめる。 「気にしないで。僕にも苦手なものがあります。それにかわいい女の子にハグされるのは嫌な気持ちじゃないです」  これ以上言葉を重ねても、墓穴を掘る未来しか見えない気がする。  口を滑らせるより無言を選択して箸を動かして朝食を口に運ぶ。 「マイはどうして雷が嫌い?」 「幼稚園の頃に一人で留守番してたときに近所に雷が落ちたことがあって……そこからダメになっちゃいました」  トラウマになった出来事を素直に答えるとアルも大きくうなずく。 「僕はヘビが大嫌いです。見ただけでマイみたいに飛び上がっちゃう。だから昨日のことは気にしないで仲良くしてくれるとうれしいです」  ちょっとずれた慰めの言葉に素直にうなずいた。
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