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麻衣の笑顔が一番の薬だと笑ってくれるのはうれしいが、心配は消えない。
気を利かせたアルが飲み物を買いに行くと、椅子を引き寄せて祖母に問う。
「おばあちゃんは私たちと一緒に暮らしたくないの?」
「そんなことを言うなんて……さては加奈子の差し金かい?」
苦く笑って素直にうなずいた。
どうやら母の作戦は祖母にはすべてお見通しのようだ。
「嫌じゃないよ。ただね。おじいさんの本を捨ててあの店を潰してしまうのは寂しくって……誰か引き継いでくれる人がいないか探してるんだけど」
その当てはないのだろう。寂しそうに目を細めて夏色の空を眺めた。
「田舎に引っ越してくる物好きもいないし、そろそろ諦めなきゃいけないね」
「――おばあちゃん。お店のことなんだけど……お願いがあるの」
祖母が惜しむ理由は麻衣にもなんとなく分かる。
幸い夏休みは始まったばかり、少しでも気持ちが軽くなるように麻衣にも手助けができるかもしれない。
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