14人が本棚に入れています
本棚に追加
※
『それで夏休みの間、麻衣がおばあちゃんの店を手伝うことにしたの?』
携帯のスピーカーから聞こえる母の声。
「うーん、手伝うって言っても一人で店番するわけじゃないわよ」
病室で祖母に蔵書の処分を麻衣に任せてもらえないかと頼んだ。
「実はね、夏休み限定でブックカフェを開こうと思ってて……まずは資金集めも兼ねてアルさんと売れそうな本を選別してたの」
『アルさん?』
「ここでボランティアをしてくれてる外国人。優しくてカッコいいのよ」
おかげさまで今のところ順調に資金も集まり始めている。
『麻衣ってば急に色気づいちゃって。本なんか興味ないと思ってたのにブックカフェを開くなんて言い出すんだもん、そんなことだろうと思ったわ』
母のあきれたような声に、そんなことはないと慌てて口をとがらせる。
「だってお客さんが全然来ないの、びっくりしちゃった」
あまりに客が来なくて――店番は半日で飽きてしまった。
どうせ売れないだろうと古い図鑑をオークションサイトに出品してみた。
「は? うそでしょ」
図鑑についた値段は――悪戯かゼロの数を間違えたのだろうと思ったほど。
世の中には麻衣がいらないと思っているものでもお金を出してでも欲しいと思う人がいることを初めて知った。
「実はね……コーヒーを飲みながらゆっくりしてもらうのはアルさんのアイディアなの」
せっかく来たお客様にありがとうの気持ちを伝えるためのサービスとして始めた――のだが、今までそのチャンスはほとんどなし。
今回のブックカフェではコーヒーだけではなくお菓子も提供しようとアルが商店街のお菓子屋さんとコラボレーション企画を頑張ってくれている。
『なんだかこっちにいるより楽しそうね。手伝いもいいけど高校生なんだからちゃんと夏休みの宿題もやりなさいよ』
盆休みには様子を見に行くと嬉しそうな小言を忘れない母に二つ返事で通話を終了する。
「ここにテーブルを増やして……文庫本を見やすいように整理しなきゃ」
この店をお客さんでいっぱいにして退院した祖母を驚かせるのだ。
――それが今の二人の目標だ。
※※
お読みいただいてありがとうございました。
久しぶり過ぎて、感覚がつかめません( ̄▽ ̄;)
無理やりな展開もございますがご笑納いただけるとうれしいです。
最初のコメントを投稿しよう!