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いつの間にか雨の礫をばらまく雨音は滴る雫に変わっていた。
「あ、ああっ、ごめんなさい、すみませんっ」
恥ずかしさに頬を染めて、あわてて離れると空色の目と視線が絡んだ。
「おまじない効きましたか? オヘソ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
おどけて両手を腹に当てるアルの意図を理解して口元を緩めた。
「この雷避けのおまじないもタエちゃんに教えてもらいました」
腕に抱き取って頭を撫でるところまで、祖母のおまじないと同じだ。
けれどこちらは年頃の娘。恥ずかしくて鼓動が跳ね上がったまま。
夏の夕暮れに雨と一緒にやって来る雷は嫌いだった。
大きくなってもひとりで母の帰りを待つ寂しさが苦く蘇ってくるようで心臓が冷えて縮み上がる。
(あのときのまんま……まだ、雷が怖いなんてカッコ悪い)
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