二人で一つ

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 光線が差し込む明るいリビングルームで、主人格の兄は一人静かに座っていました。彼の表情は深刻で、思考がどこか遠くに飛んでいるように見えました。  彼の名前は大樹(たいき)。大樹は解離性同一性障害を抱え、数多くの副人格が彼の内部に存在していましたが、その中でも特に明るく活発な副人格、妹の名前は紗衣(さえ)でした。  紗衣はいつものように現れ、大樹のそばに座りました。彼女は長い黒髪を軽やかになびかせながら、優しい笑顔で大樹を見つめました。紗衣はいつものようにピンク色のワンピースを着ており、その可愛らしい姿はまるで大樹の守護天使のようでした。 「お兄ちゃん、元気ないね。どうしたの?」  大樹は深いため息をつきながら、紗衣に語りかけました。 「紗衣、最近、僕の中で何かが変わってきているんだ。自分自身と向き合うことが難しくなってきたんだよ」  紗衣は大樹の手を優しく握りました。 「お兄ちゃん、大丈夫だよ。私がいるから。私たちはいつも一緒にいるんだから、これからもよろしくね」  大樹は紗衣の言葉に胸が温かくなりました。彼女の存在は、彼の内部の闇を明るく照らしてくれる光のようでした。大樹は紗衣の手を強く握り返し、感謝の気持ちを込めて微笑みました。 「ありがとう、紗衣。本当に頼りにしているよ」
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