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「どうも。一週間振りですね」
その日、俺が駅前の待ち合わせ場所に着くと、既に他のメンバーは揃っていた。江崎さん、金さん、メイ。
「お疲れ様、ロットくん。ちょうど今、ハイPの文句言ってたとこ」
「ハイPちゃんは悪くないっすよ江崎さん! おめでたい話じゃないすか」
「ハイハイ。『金の天使を探してます』くんはブレないね」
「フルで呼ぶのはやめてください!」
「でも一般の消費者的には、散々思わせ振りなこと言っといてこれはないでしょ?」
江崎さんが俺にスマホを向ける。ハイPのSNS――。
《このたびハイPは、アルビー全体の公式マスコットに任命されました✨
これからもよろしくね😆》
敬礼するハイPの写真がついたこの投稿は、俺も五日前に見た。その前までのお別れムードのつぶやきの数々は、ハイパーポテトのキャラではなくなるという意味だったらしい。そんな、アルビー社のさよなら詐欺にまんまと乗せられ、別れを惜しんでいたネットユーザー達の怒りはすさまじく、ハイPやアルビー公式のSNSは今大変な炎上騒ぎになっていた。
俺はフッと皮肉っぽく笑って言った。
「俺も最初は『は?』って思いましたけど、公式は嘘は言ってないんですよね。まあ、よかったじゃないですか」
まあね、と江崎さんが渋々同意する。
「でも私、この騒動で体重2キロ増えちゃいました……」
「メイさんドンマイ。営業で外回りしてた俺に隙はなかった」
ずるいです、という抗議の声を聞き流して、俺は咳払いした。
「じゃ、そろそろ、ハイPの出世をお祝いする会? の買い出しに行きますか」
向かうのはドラッグストアだ。ハイPなしのパッケージにリニューアルしたハイパーポテトが、変わらぬ味で待っている。
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