0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
会社の薄暗い廊下の隅の自販機は当たりが出る自販機で、しゃべる自販機だった。
「当たりが出たからもう一本選べるよ! ボタンを押してね!」
あ、初めて当たったな、という単純な驚きと、ちょっとした困惑が心に生じた。
この自販機にはお世話になった。クリスマスもお正月も、この自販機に教えてもらった。「メリークリスマス!」「明けましておめでとう!」と場の空気など一切気にしてない人みたいな明るい声でこの自販機はしゃべった。
……もう一本、どれにしようか。
結局他に欲しいものがなくて、一本目と同じブラックコーヒーのボタンを押した。
「これからもよろしくね!」
いつもの決めセリフと同時に、ゴトンと缶が落ちてきた。
今までありがと。
心の中でお礼を言って、二本の缶コーヒーを胸に抱えて、職場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!